『ブレードランナー』と『ブレードランナー2049』の間
『ブレードランナー2049』の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴにより第1作目の2019年と2049年の間の物語を3本製作を依頼したそうです。
順にアップします。
2016年に見た映画10選・ベスト3
2016年は177本、映画館では36本見ました。12月は映画館には行けずWOWOWでの2本のみです。
まず177本の中から10本選び、さらにベスト1を選んでみようと思いましたが、ベスト3はすぐに決まる代わりにそれ以下を決めるのがむつかしく、順位をつけずに10選とします。
では、見た順で10選
・『ブリッジ・オブ・スパイ』
・『オデッセイ』
・『キャロル』
・『サウルの息子』
・『ディーパンの闘い』
・『ボーダーライン』
・『ズートピア』
・『素敵なサプライズ』
・『エクス・マキナ』
・『この世界の片隅に』
この10本です。すべて映画館で見たものになりました。
10選の話の前に、10選以外のものから。
見るんじゃなかった最低の作品2本
・『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』
・『By The Sea』(邦題『白い帽子の女』)
『フィフティ・シェイズ〜』はシーアが一曲歌っているという一点のみで見なくてはいけません。2015年の『カリフォルニア・ダウン』も最低でしたが、まだ派手なCGを楽しむことと主演の行動にツッコミを入れるという楽しみがありましたが、こちらは全く見る価値がなかったと言い切ります。なのになぜ続編が撮られることになったのか理解できません。アンジェリーナ・ジョリー監督作品の邦題『白い帽子の女』は最初から最後まで退屈で見所が全くありません。これは飛行機の小さな画面で見たからかもしれませんが、これがオチなのか?と首をひねります。メラニー・ロランにハズレなしの法則が破られた作品です。どないしてくれるねん。
軽く愚痴ってみました。
特別賞『ミルドレッド・ピアース』
特別賞に選んでおきながらその理由には触れたくない気持ちがあります。でも、書いておきます。
1945年アメリカ作品で、マイケル・カーティス監督、主演がジョーン・クロフォードです。いわゆるフィルムノワールといわれているジャンルの作品です。タイトルのミルドレッド・ピアースというのはジョーン・クロフォードが演じている役名で、ミルドレッド・ピアースが社会的に自立しようとする物語です。
ちょっと理由があってDVDを購入して見ました。わざわざ買って見た価値がありました。
もし『ブレードランナー』ファンならばこの作品は必ず見ておく必要があります。なぜなのかは見れば必ずわかります。
さて、10選のひとこと感想
『ブリッジ・オブ・スパイ』
わずか数秒のシーンのためにベルリンの壁を造っています。スピルバーグだからできるんだと思います。音楽は本作で初めてジョン・ウィリアムズではなくトーマス・ニューマンが担当しました。ぼくはジョン・ウィリアムズの音楽は好きな方ではないのでやっといい音楽になったと思いました。
『オデッセイ』
リドリー・スコット監督作品。
『キャロル』
別の独立した記事を参照ください。▶︎
『サウルの息子』
この映画を観終わってすぐにポーランド行きの飛行機を取ってビルケナウに行ってきました。
『ディーパンの闘い』
先の『サウルの息子』が2月15日(月)、そしてこの作品を見た同じ2月17日(水)に中国映画の『最愛の子』を見ました。『最愛の子』と『ディーパンの闘い』はどちらも、家族がテーマの映画と見ることができます。そして『最愛の子』は2013年公開の邦画『そして父になる』と極めて近い題材の物語です。ですが、この2作は比較できないほど『最愛の子』が優れた作品と言えます。言葉悪いけど、これに比べたら『そして父になる』はスカみたいな作品です。
そんな『最愛の子』を退けて10選に選ばれたのがこの『ディーパンの闘い』です。『ディーパンの闘い』から見れば『そして父になる』はカスみたいな作品ということになります。
『ボーダーライン』
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品。撮影ロジャー・ディーキンス、音楽ヨハン・ヨハンソン。以上です。これでわかるやろ!と言いたい。
『ズートピア』
10選のうち2作品がアニメですね。もともとあまりアニメを映画館では見ないのですが、言い方を変えるなら、厳選して見るためにアニメは見ただけでポイントが高い傾向があります。同じ理由で昨年は『インサイド・ヘッド』がかなりの高得点でした。
『素敵なサプライズ』
今年はベルギー映画をもう一本『神様メール』というのも見ました。多分『神様メール』は評判も評価もよかったと思います。両作品共6月に見ています。『神様メール』も傑作と思いますが、ぼくは『素敵なサプライズ』をぜひお薦めしたい。これは多くの人に見てもらいたいと思った映画です。
『エクス・マキナ』
この作品は年間ベストという評価では終わらない作品になると思います。『ブレードランナー』には及びませんが、類似のカルト作品のひとつとして『ブレードランナー』と比較して論評することもしておきたい作品です。
『この世界の片隅に』
とにかく見ろ!
つべこべ言わずに見てください。
もしよかったら見てください、とはいわず、必ず見てください、と言います。
まずは見ないと始まりません。
公開期間にもかかわらず他の映画を見るような人とは話したくないくらいです。
しかもその作品が山崎貴だったら最悪です。友達にはしたくないです。
邦画が豊作と言われた2016年ですが、ぼくの10選にでの邦画は『この世界の片隅に』だけとなりました。『シン・ゴジラ』も『君に名は。』もよかったのですが、『この世界の片隅に』と並べるほどの力はありませんでした。
この10選からさらにベスト3を選ぶと
『ボーダーライン』
『エクス・マキナ』
『この世界の片隅に』
そして、1位は、『ボーダーライン』です。誰がなんと言おうとぼくの1位はこれです。
なぜこれが一番なのかを書き始めると止まらなくなりそうです。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ、ロジャー・ディーキンス、ヨハン・ヨハンソンの組合せで『ブレードランナー2049』を撮ります。『ボーダーライン』でここまでの高評価の作品なのに『ブレードランナー2049』ができれば一体ぼくはどうなってしまうんだろうと思います。
その前に5月にはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品の『メッセージ』が公開されます。
今から想像するだけで失神しそうです。
『エクス・マキナ』のポロック
出演者わずか4人。舞台は人里離れた邸宅。しかも、出てくる部屋はごく限られ、部屋に置かれているモノもごく少ない。
うっかり寝てしまいそうな抑えられた演出。
そんな地味で静かな作品ですが、その表現形式とは真逆でとても大きなテーマを扱っている作品です。
淡々として一見要素の少ない画面に、さまざまな要素を巧みに組み合わせているのです。
要素が少ない分、その要素の意味も重くなっていると言えます。
そういう意味でカルト映画の巨塔『ブレードランナー』を意識した映画に見えます。表現形式は違いますが、カルト映画となる条件は揃っています。
アレックス・ガーランドはこれが監督初作品ですが、この前に『わたしを離さないで』の脚本を書いていて、どちらも似た題材を扱っていると言えます。そしてテーマはどちらも『ブレードランナー』と同じです。
早くもカルト映画の傑作といわれている本作には書くべきところがいろいろ出てくるので、今回は一枚の絵について書いてみます。
部屋にジャクソン・ポロックの絵が架けられています。
本編にポロックについて語られるシーンもあます。
絵についてセリフのなかでポロックの絵画手法をAIになぞらえて語られています。
具体的にはドリッピングによる絵は一体誰が書いたと言えるのか。ポロックは自分を無にして、意図的に書いているわけではないが、ランダムに書いているわけでもない。それはAIロボットであるエヴァと対比して話されています。エヴァはコンピュータのワイヤーフレームのような線画を描くのですが、それがなんなのかわからない。そのことと対比させるためにポロックの絵を使っています。
この映画にポロックの絵が出てくるのにはもうひとつの意味があることに気がつきました。
2006年11月にゲフィン・レコードの社長デイヴィッド・ゲフィンが所有していた「No.5, 1948」をにメキシコの投資家デイヴィッド・マルチネスが1億4000万ドルで競り落としたとニューヨークタイムズ紙が報じたのです。
1億4000万ドルというと当時のレートで約165億円、この映画の製作費1500万ドルの9倍以上です。
この落札額は絵画の最高価格に近い金額で、つまりはとてつもない価値のある絵ということです。
なんだこんな作品にこれほどの金額がつくなんて、それだったら自分でも描けたのに!と思った批評家は多かったようです。
ところが、このポロックの絵を数学的に分析してみると、意外にもかなり巧みな技を駆使していたことがわかってきました。
マーカス・デュ・ソートイ著の『数学の国のミステリー』にこんなことが紹介されています。
事実、オレゴン大学のリチャード・テイラー率いる数学者の一団が1999年にポロックの絵を分析したところ、ポロックがあのひきつけの発作のような手法で自然好みのフラクタル図形を作り出していたことが明らかになったのだ。ポロックの絵は、一部を拡大しても全体ときわめてよく似ており、どうやら、フラクタルの特徴である無限の複雑さを持っているらしい(もちろん拡大倍率をどんどん上げていけば、けっきょくはひとつひとつの絵の具のはねが見えてくるわけだが、それにはキャンバスを千倍以上に拡大する必要がある)。
この数学的分析によってポロックの作とされる絵画の真贋を判定することができるようになりました。
ポロック・クラズナー真贋証明委員会がテイラー率いる数学者チームに依頼し、収蔵庫から見つかった32作すべてが偽物であると判定されたのです。
一方でテイラーは、フラクタルな絵画を描く「ポロック化装置」を作っている。絵の具を入れた壺を糸で電磁コイルに取り付けて、いかにもポロックらしい作品を描くことができるそうです。
ここで重要なのは「数学的分析」ということなんだと思います。
映画の中ではその壁に掛けられたポロックの絵にゆっくりとカメラが寄るシーンがあります。
この絵は本物か偽物かをあなたは見分けられるかな。きっと見分けられまい。もう人間には判断できないんだよ、とじわじわと迫ります。
『ブレードランナー』のタイレル社のフクロウのように。
参考文献:マーカス・デュ・ソートイ『数字の国のミステリー』新潮文庫
原題 Ex Machina
監督 アレックス・ガーランド
出演 ドーナル・グリーンソン
アリシア・ヴィキャンデル
オスカー・アイザック
音楽 ベン・サルスベリー
撮影 ロブ・ハーディ
上映時間 108分
公式サイト exmachina-movie.jp
関連記事の紹介
『エクス・マキナ』の面白いエピソード15選!▶︎http://ciatr.jp/topics/163731
http://www.in-movies.com/blog/2016/5/29/-exmachina-
http://kagehinata64.blog71.fc2.com/blog-entry-1152.html
http://touris2.oops.jp/2016/06/14/exmachina/
『ボーダーライン』が上映されます
そういえばヨハン・ヨハンソンって今年のアカデミー賞作曲賞にノミネートされていたなあと調べていたら、”Sicario”のサントラでたしかにノミネートされていました。受賞したのはエンニオ・モリコーネ(タランティーノ監督作『ヘイトフル・エイト』)でした。壇上で嬉し泣きした姿を見て、エンニオ・モリコーネという大巨匠がアカデミー賞もらって嬉しかったんだというのにびっくりしました。
それはそれとして、ヨハン・ヨハンソンっておもろい名前やな。これ日本人でたとえると高島隆とかドラえもんののびのびたかな。
“sicario”とはスペイン語で殺し屋とか暗殺者という意味らしく、それが『ボーダーライン』という邦題で来月公開することを知りました。アカデミー賞授賞式でノミネート紹介時にエミリー・ブラントの戦闘シーンをみて『オール・ユー・ニード・イズ・キル』やんかと思っていた作品です。
ふーん、で終わってしまいそうになったんだけれど、監督を見てびっくり。ドゥニ・ヴィルヌーヴ(Denis Villeneuve)ではないか。
これは見んとあかん。
この監督は2010年に『灼熱の魂』という作品を発表してアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされてます。この年のアカデミー外国語映画賞はかつてない激戦で、受賞したのはデンマークの『未来を生きる君たちへ』(スサンネ・ビア監督)ですが、他の候補にアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の『BIUTIFUL ビューティフル』がメキシコ映画として、そして『籠の中の乙女』というギリシャ映画などがノミネートされていた年です。
『籠の中の乙女』というなんともヘンテコな映画を撮ったヨルゴス・ランティモス監督の最新作は『ロブスター』でもうすぐ公開です。ヨルゴス・ランティモスについてはまた別に記事を書きたい監督です。
話を戻すと、ドゥニ・ヴィルヌーヴは『灼熱の魂』を撮った後アメリカに進出し『プリズナー』を撮った後『複製された男』を撮ります。そしてその後のタイミングで『ブレードランナー』の続編の監督をするというニュースがありました。
『ブレードランナー』を偏愛するものとして、続編を撮るなんて許されないことと思っていましたが、ドゥニ・ヴィルヌーヴが撮るのであれば見てみたいと思います。逆の言い方をするとドゥニ・ヴィルヌーヴが撮る続編であれば見てみたいと強く思えるのです。他に思い当たる監督はいません。
そんなドゥニ・ヴィルヌーヴ監督だから、見んとあかんのです。
『灼熱の魂』http://ei6suke.izoizo.com/review/incendies/
『籠の中の乙女』http://ei6suke.izoizo.com/review/dogtooth/
『ボーダーライン』公式サイト http://border-line.jp
『ボーダーライン』予告編
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』メイキング映像
途中ちらっと写っている顔にたくさんのドットをつけていた黒人女性は「それでも夜は明ける」でアカデミー助演女優賞を受賞したルピタ・ニョンゴ。マズ・カナタ(Maz Kanata)という居酒屋の女将のような役で登場します。
またサイモン・ペグも出演していたことがわかります。サイモン・ペグはアンカー・プルートという砂漠の惑星ジャクーの廃品回収業者のボズ役で出演。
『ブレードランナー』小ネタ|ヌードルバーのシーン
『ブレードランナー』オープニングのヌードル・バー「ホワイトドラゴン」でのシーン。
ガフがデッカード(ハリソン・フォード)に後ろから声を掛けるシーンですが、最後の台詞をよく聞いてみると、こう言っているように聞こえます。
「キャプテン・ブライアントとか。メニオマイヨ」
これを英語表記に書き下すと、
”Captain Bryant toka, me ni omae yo”
どうも、ガフの台詞の音の切り方と言葉の切り方がずれているようで、ここは、
”Captain Bryant toka me. Ni omae yo.”
と表記するのが正解に近いようです。
第一文は、”Captain Bryant talked to me” が訛っているっぽいです。もしかしたら他言語かもしれませんけれど。
第二文は、もうお分かりと思いますが、日本語ですね。
「に おまえ よ」=「お前に用」の主語と助詞が倒置されています。
「キャプテン・ブライアントが『お前に用がある』と言っていた」という台詞なんですね。