『インターステラー』(2014)

クリストファー・ノーラン監督最新作。SF映画の巨岩『2001年宇宙の旅』に真正面から挑んだ作品と言えます。
さっぱりわからんかったけれど激烈に感動した、というのが初見の正直な感想です。
この「さっぱりわからん」も含めて『2001年』的であると言えます。
多くの映画ファンが大傑作と認める『2001年』は一体なんの話なのか分かっている人は多くいません。だけど、多くの人を感動させ、20世紀最高のSF映画と挙げられる作品になってます。
ネットでレビューをいくつか検索してみると涙したという感想の間に、これのどこがええねん、という感想も見受けられるということからも、この作品が大傑作となって映画史に残る可能性が高そうに思えます。
ここでは、さっぱりわからんかった筆者に多くを語ることができませんので、いくつかの映画と比較して感想を書いてみたいと思います。

一年前のSF大作『ゼロ・グラビティ』とは真逆の作品である

同じ宇宙もののSF映画として最近のとんでもない力作で本当はアカデミー賞作品賞を獲るはずだった『ゼロ・グラビティ』とは映画技術でみると真逆の作品です。
『ゼロ・グラビティ』は映画史の最先端を行くテクノロジーを駆使し、もっというとこの映画を撮るために新しい撮影技術を開発して創られた100%デジタル撮影の作品です。本来撮影後に映像処理するために使うCGを先に作り込んで、その映像に俳優たちをはめ込むという逆のことを行なっています。そのためにあらゆる動きを同期させると言うかなり難易度高いことをやっているのです。
『インターステラー』は同じ宇宙もののSF映画にも関わらずフィルムで撮影しています。35mmとIMAX70mmフィルムだそうです。
CG処理は特撮時のワイヤーなどを消す作業程度にしか使っていません。
そのため全部実物大のセットやミニチュアを創って撮っているのはもちろんです。
つまり1968年に発表された『2001年』当時の技術でほぼ撮られています。六角形のレンズフレアが写っているのはそのためです。
クリストファー・ノーラン曰く、フィルムで撮られたものの方がリアルであり、デジタルで撮影されたものはどうもコンピューターゲームみたいで好きじゃないということなのです。
また黒がデジタルではどうしても真っ黒にはならないということもフィルムを選んだ理由として挙げています。

『未知との遭遇』

監督は『2001年』だけでなく多くのSF映画からの影響を認めています。『ブレードランナー』『エイリアン』『スター・ウォーズ』『E.T.』『ライトスタッフ』、タルコフスキーの『惑星ソラリス』『鏡』などを挙げています。

またこの映画は最初はスティーヴン・スピルバーグが撮るはずでした。『コンタクト』をコーディネートした理論物理学者キップ・ソーンが立案したものをスピルバーグが撮ることとなりスピルバーグに雇われたジョナサン・ノーランが脚本を書いていた経緯があります。

ところがスピルバーグのドリームワークスがパラマウントからディズニーに移ったためにパラマウントが新たに監督を探すことになり、ジョナサンが兄のクリストファー・ノーランを推薦したのです。

そういう経緯があり、物語には壮大なテーマを家族に集約させるという手法を採っています。

家族を棄てて宇宙に旅経つという設定は『未知との遭遇』そのものです。そういう視点で『インターステラー』を見てみるのも面白いと思います。

『インセプション』

クリストファー・ノーラン作品の近作『インセプション』と比べてみても面白い。

こちらは夢の中の物語で、夢の中で夢を見るなどと自分の意識の下へ下への入って行く物語であるのに対して、『インターステラー』は逆に宇宙の上へ上へと向かっていく物語です。

自分の意識の奥へ行くに従ってどろどろとしたものからやがて砂漠のような風景となることを描いた『インセプション』を撮ったクリストファー・ノーランが宇宙をどう描くのかという見方で見るのは面白いです。

また、クリストファー・ノーランはキャスティングが絶妙な監督であると言えます。

たとえば『インセプション』ではエディット・ピアフの曲が重要な役割を果たしていますが、そのエディット・ピアフを演じたマリオン・コテアールを主人公の自殺した妻として出演させ、主役のディカプリオは『インセプション』出演前に出た『レボリューショナリー・ロード』と『シャッタ・アイランド』では妻を死なせてしまった役を演じています。

観客が映画を見る時にその俳優が演じた背景を無視して見ることができないことを巧みに利用しているとも言えます。

今回もそういうキャスティングがあります。

宇宙物理学に関してはちんぷんかんぷんですが

最後に宇宙物理学の知識があった方が楽しく見られると思いますが、物理学というだけでアレルギー症状を起こす人も少なくないと思います。

別にわからなくても大丈夫です。

後半のクライマックスに向けて「この際相対性理論はどうでもいい」という台詞が出てきますから。

その上で、ひとつだけ触れておきたいのが5次元です。

1次元:線
2次元:面
3次元:立体

というのは基礎知識として、次に、4次元という時に一般的に言われているのが「時間」です。

それはまあ同意するとして、5次元めの軸は一体なんなのか。

映画の中でアン・ハサウェイが、そのことについて語るシーンがあります。

それは一体なんなのか、に注目してご覧になると面白いと思います。

クリストファー・ノーランと言えば音楽はハンス・ジマーが常連ですが、今回はダークナイトシリーズなどで耳にするハンズ節みたいなものは消えた新しい音楽になっていると思います。

なんだか全然書き足りませんが、とりあえずは初見の感想ということで。

今年のぼくの映画鑑賞歴は『ゼロ・グラビティ』にはじまり『インターステラー』に終わりそうです。

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