『博士と彼女のセオリー』(2014)

主演のエディ・レッドメイン(Eddie Redmayne)を意識してはじめて見たのはリドリー・スコット製作のテレビドラマ『ダークエイジ・ロマン 大聖堂』からだ。脇役ながら絶対に忘れられない存在感だった。この映画では天才的に演技がすばらしい。第87回アカデミー賞主演男優賞を獲得したのは当然に思えるほどだ。
この映画の邦題が例の如く変で、原題の通りの「万物の理論」の方が映画を見誤らずに済む。
主題は一見夫婦の愛情物語に思えるが、それが邦題によるミスリードで、実は「time 時」がテーマになっている。これは「空間・時間」の「時間」のことで、宇宙物理学物語なのだ。
宇宙と時間をイメージした映像をとてもうまく、さりげなく使っている。
映画「2001年」ネタもあるし、キップ・ソーンが登場しているけれど、宇宙映画をよく知っている人には思わずにやりとさせる。それもうまい。
冒頭、研究室にさりげなくブレのニュートン記念館のパースがかけられていて、建築好きをにやりさせてくれます。

原題 The Theory of Everything
監督 ジェームズ・マーシュ
出演 エディ・レッドメイン
   フェリシティ・ジョーンズ
   エミリー・ワトソン
音楽 ヨハン・ヨハンソン
上映時間 124分

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『大統領執事の涙』(2013)

笑福亭鶴瓶そっくりのフォレスト・ウィテカー主演の事実に基づく物語。映画的にはカメラもふわふわしていて、執事たちの動きも美しくなく、全体的に雑に撮られている。つまりこの映画は主役が彼らではないという撮り方をしているんだなと見ることができる。
この映画の本当の主役は、黒人から見たアメリカ史である。
主役が人物ではなく歴史そのもので、その歴史を執事の息子であるルイスに集約させている。
このルイスを演じたデヴィッド・オイェロウォが『セルマ』でキング牧師を演じ、母役のオプラ・ウィンフリーがその『セルマ』のプロデューサーとなっている。全部繋がっている。
Dinah Washington の曲をいくつか挿入歌として使っているのも、テーマにかかっている。

監督 リー・ダニエルズ
出演 フォレスト・ウィテカー
   オプラ・ウィンフリー
   デヴィッド・オイェロウォ
上映時間 132分
公式サイト http://butler-tears.asmik-ace.co.jp

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『おみおくりの作法』(2013)

英国版『おくりびと』です。
ぼくはこっちの作品の方が好きです。
日本映画『おくりびと』はクライマックスで「なんで」というぼくから見たら欠陥があったので急激に醒めていってしまったのですが、こちらの『おみおくりの作法』はラストのストーリーがジャンプするところもうまく撮られていて感動的でした。

たいていの場合、テーマは脇役の台詞で語られますが、この作品でも厭な上司が教えてくれます。
『シャーロック・ホームズ』の警部役で一度見れば忘れられない特徴的な脇役顔で主役なのに台詞が少ないエディ・マーサンも、スタティックな映像も、ちょっと笑えるユーモアセンスも、レイチェル・ポートマンの音楽も素晴らしい。
原題の「Still Life」も二重にも三重にも意味が重ねられていてひっそりとした名作として残っていくことでしょう。


DATA
原題:Still Life
監督・脚本・製作:ウベルト・パゾリーニ Uberto Pasolini
音楽:レイチェル・ポートマン Rachel Portman
出演:エディ・マーサン Eddie Marsan
ジョアンヌ・フロガット Joanne Froggatt
カレン・ドルーリー Karen Drury
上映時間:91分
製作国:イギリス・イタリア
公式サイト:bitters.co.jp/omiokuri