2016年に見た映画10選・ベスト3

2016年は177本、映画館では36本見ました。12月は映画館には行けずWOWOWでの2本のみです。
まず177本の中から10本選び、さらにベスト1を選んでみようと思いましたが、ベスト3はすぐに決まる代わりにそれ以下を決めるのがむつかしく、順位をつけずに10選とします。

では、見た順で10選

・『ブリッジ・オブ・スパイ』
・『オデッセイ』
・『キャロル』
・『サウルの息子』
・『ディーパンの闘い』
・『ボーダーライン』
・『スートピア』
・『素敵なサプライズ』
・『エクス・マキナ』
・『この世界の片隅に』

この10本です。すべて映画館で見たものになりました。
10選の話の前に、10選以外のものから。

見るんじゃなかった最低の作品2本
・『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』
・『By The Sea』(邦題『白い帽子の女』)
『フィフティ・シェイズ〜』はシーアが一曲歌っているという一点のみで見なくてはいけません。2015年の『カリフォルニア・ダウン』も最低でしたが、まだ派手なCGを楽しむことと主演の行動にツッコミを入れるという楽しみがありましたが、こちらは全く見る価値がなかったと言い切ります。なのになぜ続編が撮られることになったのか理解できません。アンジェリーナ・ジョリー監督作品の邦題『白い帽子の女』は最初から最後まで退屈で見所が全くありません。これは飛行機の小さな画面で見たからかもしれませんが、これがオチなのか?と首をひねります。メラニー・ロランにハズレなしの法則が破られた作品です。どないしてくれるねん。
軽く愚痴ってみました。

特別賞『ミルドレッド・ピアース』
特別賞に選んでおきながらその理由には触れたくない気持ちがあります。でも、書いておきます。
1945年アメリカ作品で、マイケル・カーティス監督、主演がジョーン・クロフォードです。いわゆるフィルムノワールといわれているジャンルの作品です。タイトルのミルドレッド・ピアースというのはジョーン・クロフォードが演じている役名で、ミルドレッド・ピアースが社会的に自立しようとする物語です。
ちょっと理由があってDVDを購入して見ました。わざわざ買って見た価値がありました。
もし『ブレードランナー』ファンならばこの作品は必ず見ておく必要があります。なぜなのかは見れば必ずわかります。

さて、10選のひとこと感想

『ブリッジ・オブ・スパイ』
わずか数秒のシーンのためにベルリンの壁を造っています。スピルバーグだからできるんだと思います。音楽は本作で初めてジョン・ウィリアムズではなくトーマス・ニューマンが担当しました。ぼくはジョン・ウィリアムズの音楽は好きな方ではないのでやっといい音楽になったと思いました。

『オデッセイ』
リドリー・スコット監督作品。

『キャロル』
別の独立した記事を参照ください。▶︎

『サウルの息子』
この映画を観終わってすぐにポーランド行きの飛行機を取ってビルケナウに行ってきました。

『ディーパンの闘い』
先の『サウルの息子』が2月15日(月)、そしてこの作品を見た同じ2月17日(水)に中国映画の『最愛の子』を見ました。『最愛の子』と『ディーパンの闘い』はどちらも、家族がテーマの映画と見ることができます。そして『最愛の子』は2013年公開の邦画『そして父になる』と極めて近い題材の物語です。ですが、この2作は比較できないほど『最愛の子』が優れた作品と言えます。言葉悪いけど、これに比べたら『そして父になる』はスカみたいな作品です。
そんな『最愛の子』を退けて10選に選ばれたのがこの『ディーパンの闘い』です。『ディーパンの闘い』から見れば『そして父になる』はカスみたいな作品ということになります。

『ボーダーライン』
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品。撮影ロジャー・ディーキンス、音楽ヨハン・ヨハンソン。以上です。これでわかるやろ!と言いたい。

『スートピア』
10選のうち2作品がアニメですね。もともとあまりアニメを映画館では見ないのですが、言い方を変えるなら、厳選して見るためにアニメは見ただけでポイントが高い傾向があります。同じ理由で昨年は『インサイド・ヘッド』がかなりの高得点でした。

『素敵なサプライズ』
今年はベルギー映画をもう一本『神様メール』というのも見ました。多分『神様メール』は評判も評価もよかったと思います。両作品共6月に見ています。『神様メール』も傑作と思いますが、ぼくは『素敵なサプライズ』をぜひお薦めしたい。これは多くの人に見てもらいたいと思った映画です。

『エクス・マキナ』
この作品は年間ベストという評価では終わらない作品になると思います。『ブレードランナー』には及びませんが、類似のカルト作品のひとつとして『ブレードランナー』と比較して論評することもしておきたい作品です。

『この世界の片隅に』
とにかく見ろ!
つべこべ言わずに見てください。
もしよかったら見てください、とはいわず、必ず見てください、と言います。
まずは見ないと始まりません。
公開期間にもかかわらず他の映画を見るような人とは話したくないくらいです。
しかもその作品が山崎貴だったら最悪です。友達にはしたくないです。

邦画が豊作と言われた2016年ですが、ぼくの10選にでの邦画は『この世界の片隅に』だけとなりました。『シン・ゴジラ』も『君に名は。』もよかったのですが、『この世界の片隅に』と並べるほどの力はありませんでした。

この10選からさらにベスト3を選ぶと
『ボーダーライン』
『エクス・マキナ』
『この世界の片隅に』

そして、1位は、『ボーダーライン』です。誰がなんと言おうとぼくの1位はこれです。
なぜこれが一番なのかを書き始めると止まらなくなりそうです。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ、ロジャー・ディーキンス、ヨハン・ヨハンソンの組合せで『ブレードランナー2049』を撮ります。『ボーダーライン』でここまでの高評価の作品なのに『ブレードランナー2049』ができれば一体ぼくはどうなってしまうんだろうと思います。
その前に5月にはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品の『メッセージ』が公開されます。
今から想像するだけで失神しそうです。

『ボーダーライン』(2015)

期待が高まりすぎたために、必要以上にハードルを上げてしまい、本当はかなりいい作品なのに思ったほどいい作品と思えなくなることがありませんか。
メキシコ麻薬戦争という題材、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品、しかも撮影監督はロジャー・ディーキンス。期待するなと言われても期待してしまう組み合わせです。
でもな。
そんなにすごくないかもしれないしな。
という不安も一瞬頭をよぎりました。
でも、大丈夫です!
期待以上です。
さすが、プロが本当のプロの仕事をしてくれました。

あまりにもよかったので、4回映画館に行きました。本当はもう一回行けそうだったのは残念でしたが、でも4回のうち3回は最前列中央に座って、視界の端まで映画の世界に浸ることができました。

と、この映画に関してはあまりに気に入ってしまったため、感想を書くのがむつかしい。
ただの依怙贔屓の内容になってしまいそうになるからです。
でも、何も触れないわけにもいきませんので、今回は、音楽について少しだけ書いてみます。

アカデミー賞が偉いといいたいわけではありませんが、この作品はアカデミー賞の撮影賞・作曲賞・音響編集賞にノミネートされました。
音楽を担当したのはヨハン・ヨハンソン(Johann Johannsson)で、この映画の前に担当したのは『博士と彼女のセオリー』(2014)です。ご覧になった人はなんとなく覚えていらっしゃるかもしれませんが、弦楽器とピアノを中心とした美しく優しいメロディーの映画音楽です。
ところが、『ボーダーライン』では、音楽というよりもむしろ効果音のようなものです。同じ作曲家が作曲したとは思えないほど異なっています。
これは最近の映画音楽の傾向のように思っています。
誰がやり始めたのか正しくはわかりませんが、ハリウッド映画音楽界の重鎮ハンス・ジマーが『ダークナイト』の頃から実験的に始めているように感じます。
ハンス・ジマーの音楽でいうと、『インセプション』ではハンス・ジマー節といえる彼ならではのメロディーも使われていますが、かなりすごいことやっています。『インターステラー』ではその得意技を封印し、効果音のような音楽を提供しています。
デヴィッド・フィンチャー監督作品の音楽担当といえるナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーも音楽というより効果音に近いと言えます。
今回のヨハン・ヨハンソンの音楽はその延長線上にあり、ひとつの頂点といえるレベルまで高まったように感じます。
メロディーを封印して打楽器のリズムだけで表現してるように聞こえます。もっと正しく言うと意図的に音楽は聞こえず、心臓の鼓動のような音が、見る者の緊張感を高めてくれます。
その音を楽しむには映画館で体験するしかなく、4回も通った理由のひとつとなっています。

原題 Sicario
監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演 エミリー・ブラント
   ベニチオ・デル・トロ
   ジョシュ・ブローリン
撮影 ロジャー・ディーキンス
音楽 ヨハン・ヨハンソン
上映時間 121分
公式サイト border-line.jp/

『灼熱の魂』(2010)

2012年は1月から3月までに見た映画の記録がなくなってしまったんですが、4月から年末までに52本の映画を見ていました。そのなかからおすすめの映画を一本紹介したいと思います。

「灼熱の魂」(原題:Incendies)という2010年のカナダ映画です。

原題の ‘incendies’ とはフランス語で「火災」という意味のようです。内容は火災というニュアンスよりも大火事に近い気がします。邦題の『灼熱の魂』はいいネーミングじゃないかと思いました。

劇場ではなくWOWOWで放送されたものを録画で見たものです。
正直に言うと、実は途中寝てしまいました。
うーん、なんだろう、なんかようわからへんなあ、と思うと、ついうとうととなってしまっていくつかのシーンが記憶にありません。
もう途中で見るのんやめようかなと思ってしまいそうになります。

その理由をいくつか考えてみましたが、恐らく全体的に説明が詳しくないからだと思います。
登場人物の関係性がわかりにくい。母と娘が出てきますが、はじめは同じ人物かと思ってしまって気づくまでに時間を要してしまいました。
時間軸を複雑に入れ替えていて、その説明があまりされていません。
たとえば、いままでは回想シーンだったのが現在のシーンに切り替わっても、画面の違和感がほとんどないためにその変わり目がわかりにくかったりします。最近でいうとデヴィッド・フィンチャーの『ドラゴン・タトゥーの女』のように時代が変わるとフィルムの色味が変わったりしてわかりやすいのですが、本作品は同じ調子で続くので、あ、これ時代が変わったやんと自分の頭の中でシーンを遡ってストーリーを追い直さなければいけないところがあります。

それでも諦めずに最後までたどりつくと、ものすんごい結末を見ることができます。言いたいけれどこれ以上は書きません。いや、話すと止まらなくなりそうで、ついつい言ってしまいそうになってしまうからです。
そりゃもうすごいのです。どれくらいすごいかも言いたくなってしまいそうですが、それも言いません。どういう種類ですごいのかも言いません。喋りたくなりますが、ぐぐぐぐっとこらえます。そういう意味ではこの映画はミステリー映画ともいえます。

内容については多くを触れることができませんが、レバノンらしき内戦が行なわれているある国で、母と二人の子供をめぐる物語です。母が死ぬところから始まります。母の死後、残された二人の子供に遺言が言い渡され、その遺言に従って母の人生を辿る物語となってます。

この作品は2010年の第83回アカデミー賞外国語作品賞にノミネートされた5作品のうちのひとつになっています。
「未来を生きる君たちへ」デンマーク
「BIUTIFUL ビューティフル」メキシコ
「籠の中の乙女」ギリシャ
「Hors-la-loi」アルジェリア
の5作品です。
なかでも「21グラム」「バベル」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督によるバルセロナを舞台にし、スペインを代表する俳優であり同じくスペインを代表する女優ペネロペ・クルスを妻に持つハビエル・バルデムが主演の作品「BIUTIFUL ビューティフル」は大きな話題を呼びました。
結果はスサンネ・ビア監督によるデンマーク映画「未来を生きる君たちへ」が受賞しています。この映画は報復の連鎖について問題提起している傑作です。見事受賞した作品であることが納得できると思います。
ですが、この「灼熱の魂」は衝撃的な作品です。衝撃という言葉が陳腐に思えるほど燃えるように熱い、まさに灼熱の作品です。

そう、たとえ途中うっかり寝てしまってでもこの「灼熱の魂」は見る価値があるのです。なんちゅう紹介やねんと言われそうですが、そうなのです。見た人の感想を聞きたいと思う数少ない作品のひとつです。

もしご覧頂ければなぜこの映画について詳しく語れないのかがわかっていただけるのではないかと思います。

日本語版の公式サイトはこちらです ▶ http://shakunetsu-movie.com/pc/
いつまで残っているサイトなのかが不安なので、各メディアから寄せられたレヴューからふたつだけ引用しておきます。


今年のアカデミー賞外国語映画賞は本作が受賞すべきだった!
物語はアガサ・クリスティー級のドラマティックな展開で始まり、
ソフォクレスのギリシア悲劇のように終わる

Wall Street Journal


多くは語るまい。『灼熱の魂』は予備知識なく観るのが一番だ。
そして一度観たら決して忘れ去ることはできないだろう

Rolling Stone