『ゆれる』(2006)


公式サイト:http://www.yureru.com
2006年の映画で西川美和監督の2作目です。

公式サイトに「日本アカデミー賞 優秀主演男優賞(オダギリジョー)/ 優秀助演男優賞(香川照之)」とあります。
日本が世界に恥じる映画賞、いい加減このノミネート者にすら賞を与えることやめて欲しいですね。と本題とは関係ないけれど。

香川照之、真木よう子、蟹江敬三は「龍馬伝」のメインキャストじゃないか、と思いながら見てしまいました。

当時まだ駆け出しの真木よう子がオーディション会場の控え室で一人待っていると、ライバルの美人女優らしき女性が入ってきたので、負けるかボケ!と思いっきりガン飛ばしたら監督の西川美和だったという逸話があります。

さて、西川美和作品を2つ連続で見ましたが、この作品は途中からじんじん頭が痛くなるような内容です。
兄弟や親子、親戚だからこそある居心地の悪い関係性がよく出ています。

真木よう子が出演しててタイトルが「ゆれる」っていうことは、真木よう子の胸がゆれる話なんだろうかと鼻の下を伸ばしかけましたが、違います。
物語は、香川照之とオダギリジョーの兄弟と香川照之の実家が経営するガソリンスタンドで働く真木よう子の3人が蓮見渓谷に出かけ、真木よう子が香川照之と吊り橋を渡る途中で彼女が墜落死してしまい、それが殺人事件として立件されるというもの。

物語構成上、後半は裁判劇になってしまうものの、田舎の裁判所なので映画的な緊迫した裁判劇とは違っています。
裁判の行方が重要なので結末には触れられませんが、現実には考えにくい結末になってしまっています。そこがどうも引っかかってしまう。
なので、この映画は実はリアリズムを装ったファンタジーだと理解するのが恐らく正解だと思いました。
そしてそこはそうしないとこの映画での兄弟の物語としてうまく作用しないために計算されたのかなと。

さて、ラストシーンに涙したという複数の友達の感想を聞いております。
ネタバレになるために詳しく書きにくいのですが、映画の重要なシーンを反復させることで盛り上げています。
つまりこれはどういうことかというと……ネタバレになるので書けないのでした。

『夢売るふたり』(2012)

昨日、WOWOWで小山薫堂と安西水丸のふたりが紹介する「W座からの招待状」というコーナーで上映(放映)された作品です。

話題の女流監督西川美和の作品をはじめてみました。

放送後小山薫堂と安西水丸が感想を言うのですが、小山薫堂が「とてもいい映画だと思うんだけど、あまり受賞されていないのが残念」みたいな発言をしていて安西水丸もなんとなく同意していました。

ぼくもとてもいい映画だなと思いました。

ところが、上掲の予告編を見ると、あららららと。

ほとんどこの予告編で済みそうな内容に思えてしまったからです。

もちろんこれは本編を見たから言えることだと思うし、一番肝心だと思われる箇所には触れていませんが、でもほとんど語られているなあと。

と思うと、ちょっとどうしたものかなというところではあります。

さて、幸い今回は録画してまだ消していないので、どうしてももう一度見て確認しなければなかない重要なシーンがあります。

ここに触れてもネタバレにはならないと思うので書いてしまいますが、主演の松たか子と阿部サダヲが実は本当の夫婦ではなかったのではないかという疑惑のシーンです。

ぼくの勘違いかもしれませんが、むしろこの勘違いのまま見た方がこの映画にぐっと深みが出てくるなと感じました。

この作品、もっと喜劇にすれば作品性が高まったんじゃないかなと思いました。

やや喜劇よりのつくりですが、ベースはリアリズムとして撮られているためにちょっと笑えないシーンに引いてしまいます。

強く感じたのは、ふたりが結婚詐欺で得たお金を家で計算しているかなにかのシーンで、テレビで両親が二人がかりで我が子を虐待死させるニュースの画面に向かって、「夫婦2人で気づかないままこんなことしてたらあかん」みたいな台詞を言う吐く場面があります。

こういうシーンで爆笑させるようなコードで作られていれば、みんなゲラゲラ笑いながら、ふと我に返らせるとより深いものになったような気がしてしまいました。

「ゆれる」は録り置きしておいたのでまた近日中に見たいと思います。

『クロニクル』(2012)

昨夜、TOHOシネマズなんばで観てきました。
話題の作品だけあってほぼ満席。料金が¥1,000だったからというのもあるのかな。

高校生の3人組がある夜のパーティーで会場から少し離れた原っぱの穴に入った時から超能力を得たというストーリー。
最初は小さなレゴを動かすくらいからはじまり、それがどんどん強化されていきます。どんどんエスカレートしていき、人間性にも異変が起こってしまうという話です。

まだ28歳のジョシュ・トランク監督のデビュー作です。ファウンド・フッテージ形式で描かれているのでとてもリアルです。

ファウンド・フッテージ形式というのは撮影者が行方不明などによって埋もれていた映像を見てみたら…というホラー映画でよく使われる手法です。

本作は今回は複数の素人カメラマンで撮られた映像をうまく繋ぎ合わせてドキュメンタリー映画調になっています。
基本的には主人公たちのハンディカムによる映像ですが、彼らの友人が撮った動画や防犯カメラなどを駆使して実際にあるカメラで撮られている映像を編集して仕上げているという構成です。

音楽も音響効果も含めて一切なく、その場面に流れている音そのままになっています。

主人公の高校生が買った中古のビデオカメラで撮られているために最初は手ブレが気になりますが、途中からその手ブレも解決される画期的なアイディアが使われて、ストレスの少ない映像に変わってくれます。こういうアイディアには感心してしまいます。

なるほどだからわざわざ中古のビデオカメラだったのかとも思ってしまいます。

予告編を超えない作品が多いなか、予告編の期待を裏切らないエンターテイメント作品です。
それだけでなく、しかも人間とはなにか、力とはなにか、などについて考えさせられる深いテーマ性もあります。
ただ面白いだけではない映画じゃないかな。
2週間の限定公開とも聞きますので、ぜひお早めに。