『ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して』(2011)


たまたまWOWOWで見た映画です。
原題が “The Big Year” がなぜか『ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して』というヘンテコな邦題になってしまっています。
なんじゃこれ?
なんかメーテルリンクの『青い鳥』じゃあるまいし。

これまで鳥にまったく関心がなかったぼくですが、この映画で鳥の魅力に取り憑かれてしまいそうです。
いや、正確にいうと、鳥好きの人たちの知識の奥深さと情熱を知ります。

北米にある野鳥観察大会に「ビッグイヤー」というものがあるそうです。これは元旦から大晦日の一年をかけて観察した鳥の種類を競う大会です。
優勝候補にまでなると年間に700種類を超える鳥を見分けるのです。
これはスゴイ。
ぼくは猫好きで、オスとメスくらいの見分けはできますが、種類についてはあまり詳しくありません。
700種類を見分けるというのはかなり学術的にも詳しくなければできないよなあ。
ジャック・ブラック扮する主人公は鳴き声も詳細に聞き分けることができるという相当なマニアです。

途中このビッグイヤーを制するために必要なものとして5月のアッツ島巡りというのがでてきます。
アラスカ州の無人島でアメリカ本土よりも東京からの方が近い島として紹介されていて、ぼろぼろのプロペラ機で週に1便のみの就航という鳥マニア以外には全く用のない島として出て来ます。
その島がとても魅力的に撮影されていて鳥マニア以外にも興味が沸いたのではないかと思いました。
実際、2段ベッドの宿泊施設はどうかと思いますが、現代社会から隔絶した環境に1週間でも身を置いてみたいと思うと魅力を感じます。

鳥を観察する日々というのは経済的にもかなりハードで、ビッグイヤーに参加し優勝を目指すレベルになると一財産をなくすことを同時に意味します。なので優勝候補者は一年間仕事もせず、なおかつ台風があれば即そこまで向かえるだけの余力も必要となってくるのです。

ジャック・ブラック扮する主人公は36歳にもなって独身で実家暮らしの冴えない男でそんな息子を父はあまり好ましく思っておらず同居しながらも2人の間に溝があるという設定になっています。母親役はダイアン・ウィーストです。かつて『カイロの紫のバラ』で娼館の女主人を演じていた彼女がいまではとてもいいお母さんになってます。
この父を演じているのがブライアン・デネヒーという俳優で映画『コクーン』でいい宇宙人を演じていました。この2人の顔の雰囲気がとても似ていて本当に親子みたいです。
このふたりの関係について見るととてもいいシーンがあります。
自宅近所の森にフクロウの一種が出たというのを2人で見に行くシーンです。
ここはとてもよくできています。

この映画の監督であるデヴィッド・フランケルは『プラダを着た悪魔』を撮った人です。
その視点から見ると『プラダを着た悪魔』のアン・ハサウェイと同じキャラクターとしてスティーヴ・マーチンが出てきます。
が、この映画は邦題のようなヒューマン・ドラマがテーマではありません。「しあわせの鳥を探して」なんて書かれるととてもチープです。
実際、かなりむつかしい撮影をしてますし、シーンの進行上必要に応じて丁寧にCGで鳥を再現しています。
当たり前と書くと鳥好きから抗議を受けそうですが、やはり興行的にも失敗してます。
でも、こういう映画があっていいんだと思います。

アッツ島についてですが、Wikipediaによると「現在は厳しい上陸規制があるために無人であり、アメリカ沿岸警備隊の巡回以外に上陸者はいない。」となっています。
アッツ島 (Wikipedia) について▶

気になる島なので引き続き調べてみたいと思います。
鳥に関する小ネタも書くかもです。

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